小規模な礼拝堂であっても、パイプオルガンを導入することが流行りのようになってきているようで、無理をしてでも大きなパイプオルガンを設置するケースが増えて来ているのだそうです。
あるプロテスタント教会で見たケースでは、信徒席が100程度の小さな礼拝堂で、コンクリート造の新しい建築でしたが、やはりパイプオルガンが設置されていました。手鍵盤だけの「ポジティフオルガン」と呼ばれる小さなオルガンなのですが、残念なことに音がほとんど聞こえないのです。おそらく、礼拝堂を設計した時点で、オルガンを設置する予定がなかったのでしょう。通路や窓の位置、天井のたかさ、内装の素材、といったようなことを考え、ある程度の残響がある状態にしなければ、オルガンがある意味がなくなってしまいます。適当に建物を建てて、そこへ買ってきたオルガンを適当に置いただけではダメだということです。
リードオルガンでも同じことなのですが、明らかに言えることは、パイプオルガンよりも価格が低いこと、それと扱いが容易なことでしょう。パイプオルガンのパイプは、風が吹き出す穴の上に、ただ乗っているだけの場合が多く、地震で倒れてしまうこともあります。そのような場合、修理のためにいちいち専門家に来てもらわなくてはなりません。
また、ちょっとピアノが弾けるので、程度の感覚でオルガンを演奏しようとしますと、オルガンが壊れてしまいますので、結局、演奏家を雇用することになってしまいます。
お金が有り余っているのであればパイプオルガン導入もよろしいのかもしれませんが、僕は、リードオルガンで十分なのではないかと思います。すでに新作は行われていないようではありますが、さがせば、中古のリードオルガンを購入することも不可能ではないようです。賛美歌の伴奏ができて、ある程度の曲の奏楽ができる鍵盤数があれば、ストップがなくてもいいと思います。
また、電子楽器であっても、教会用のオルガンとして遜色ないものもあります。これであれば手鍵盤二段、足鍵盤もあり、ストップも豊富でありながら価格も手頃であって現実的です。
教会としての体裁を整えるために散財することも、ことによっては必要なのかもしれませんが、それよりも、余裕があって、なおかつ満足度が高くなる工夫を施す。これが重要かと思います。
通りすがりの小さなレンガ作りの鄙びた教会の窓から、バッハの小品を奏楽するリードオルガンが聞こえて来たりしますと、この教会はただ者ではないな、などと感心したりします。