私の目にはあなたは高価で尊い。私はあなたを愛している。(イザヤ43:4)
と書き込まれることが結構あります。しかし、それを目にする度に違和感を覚えます。人が高価とはどういう意味なんでしょうか。
口語訳聖書の該当箇所にはこうあります。
あなたはわが目に尊く、重んぜられるもの、
わたしはあなたを愛するがゆえに、
あなたの代りに人を与え、
あなたの命の代りに民を与える。
念のため、KJVの該当箇所も参照しておきましょう。
Since thou wast precious in my sight, thou hast been honourable, and I have loved thee: therefore will I give men for thee, and people for thy life.
どちらにも「高価」という言葉はでてきません。値段が高いといいたいのであれば、high price とか、expensive とかいう言葉があってしかるべきですが、ありません。
precious という言葉に「貴重な」と言う意味はありますが、価が、という限定の意味は含まれていないのです。
イザヤ書のこの箇所が何を言っているのかといいますと、「イスラエル(神と喧嘩するもの)」と名を改められたヤコブ、アブラハムの孫であり、イサクの子であるヤコブはイスラエル十二部族の祖である十二人の子息たちの親であり、イスラエル神権国家の祖である、特別な恩寵を享受したものである、と言っているわけであって、値段が高いとか安いとかを言っているわけではありません。
また、ヤコブが貴重な存在だと説明しているからといって、読者全般を同じように評価しているわけではないと思います。
どの訳の聖書に「高価」という言葉が使われているのかわからないのですが、SNSでよく目にするということは、実際にそう訳している聖書が存在するということなのでしょう。
しかし、よく考えてほしいと思います。そんな箇所にそんな言葉がでてくるのは自然かどうかということをです。お見受けしたところ、聖書には「どのような単語が」出現するのか、ということが興味の全てであるような人がほとんどのようです。
献金機になりたい、というのであればそれでもかまわないのでしょうけど。