ロシア正教会のキリル総主教が、ロシアによるウクライナ侵攻に高らかな祝福を与えた、というロイターの報道がありました。記事を見てみましょう。
[バチカン市 14日 ロイター] - ロシア正教会のキリル総主教が、ロシアによるウクライナ侵攻に高らかな祝福を与えたことで、世界中の正教会は分裂の危機に陥り、専門家から見ても前代未聞の反乱が正教会内部で生じている。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の盟友であるキリル総主教(75)は、今回の戦争について、同性愛の受容を中心に退廃的であると同師が見なす西側諸国への対抗手段であると考えている。
キリル総主教とプーチン大統領を結びつけるのは、「ルースキー・ミール」(ロシア的世界)というビジョンだ。専門家の説明によれば、「ルースキー・ミール」とは、旧ソ連領の一部だった地域を対象とする領土拡張と精神的な連帯を結びつける構想だという。
ご存知の通り、ロシアには「ロシア正教」があり、ウクライナには「ウクライナ正教」があります。スラブ民族への正教伝道は、ギリシャ人キュロリスによって、まずウクライナへおこなわれた、ということになっているのですから、ウクライナの教会はロシアよりも先輩だといえるわけです。
その、ウクライナへの侵攻を、ロシアの総主教が「善いことである」と褒め称えて神の同意を証言したというのですから驚きです。
しかし、よく考えてみればおかしな話です。ウクライナ正教の神はロシア正教の神と同じ神であるはずです。同じキリスト教であるばかりではなく、教派も同じであれば、教義も全く同じであるはずです。
神はどういう立場なのでしょうか。ロシアに味方するのか、ウクライナにか、どちらなのでしょうか。
また、キリル総主教は神による正義を正しく認識し反映しているのかいないのか、ロシアが正しいのかウクライナか、あるいはどっちもどっちなのか、どうなのでしょうか。
報道で現地の映像を見ますと、攻撃で荒れ果てた市街地に、教会だけがきれいに残っているような様子を目にする場合がありますが、ロシア兵が迷信深いからか、ロシア軍の方針なのか、どうなのでしょうね。
それにしても、キリスト教って戦争と親和性があるよね、ということだけはよく理解することができるようです(笑)。