キリスト教の問題点について考える

キリスト教の問題点について考える

伝統的教派プロテスタント信徒が運営するキリスト教批判ブログです

地獄の正体

f:id:christian-unabridged-dict:20200214130107j:plain

medium.com

聖書では「地獄」を「ゲヘナ」と表現しています。ゲヘナとは何のことでしょうか。上記のサイトから引用してみましょう。

Alas, Hell is real. Yes, that’s right. Or at least, it’s based off a real place — an ancient landfill to be exact. Although there is no mention of a “hell” in the Bible, it is based on an actual place. In Jerusalem, in the Valley of Hinnom, there is a large trash dump referred to in the Book of Matthew as “Gehenna”.

「地獄とは、この地上に実在する具体的な場所、エルサレムのヒンノムの谷のことであって、マタイの福音書では「ゲヘナ」と呼ばれている、そこは大きなゴミ捨て場であった」と述べられています。

ゲヘナ」とは、ゲー(谷)ベンヒンノム、ベンヒンノムの谷、という意味です。

聖書を引用してみましょう。

列王記下 23:10

王はまた、だれもそのむすこ娘を火に焼いて、モレクにささげ物とすることのないように、ベンヒンノムの谷にあるトペテを汚した。

歴代志下 28:3-4

ベンヒンノムの谷で香をたき、その子らを火に焼いて供え物とするなど、主がイスラエルの人々の前から追い払われた異邦人の憎むべき行いにならい、また高き所の上、丘の上、すべての青木の下で犠牲をささげ、香をたいた。

歴代志下 33:6

彼はまたベンヒンノムの谷でその子供を火に焼いて供え物とし、占いをし、魔法をつかい、まじないを行い、口寄せと、占い師を任用するなど、主の前に多くの悪を行って、その怒りをひき起した。 

エレミヤ書 19:6

主は言われる、それゆえ、見よ、この所をトペテまたはベンヒンノムの谷と呼ばないで、虐殺の谷と呼ぶ日がくる。

エレミヤ書 32:35

またベンヒンノムの谷にバアルの高き所を築いて、むすこ娘をモレクにささげた。わたしは彼らにこのようなことを命じたことはなく、また彼らがこの憎むべきことを行って、ユダに罪を犯させようとは考えもしなかった。

冒頭で引用したサイトに「 Although there is no mention of a “hell” in the Bible, it is based on an actual place.」(聖書には地獄に関する言及は一切無く、実在する土地における出来事が記されている)と説明されている通り、「ゲヘナ」とは実在する土地の名前であるわけです。

ヒンノムの谷は、小児を焼いて異教神に捧げる、といったような不道徳なことが行われた場所であったこともあって、土地の価値が低下し、ゴミや、通常に埋葬することができない罪人の死体などを焼却処理するための場所にもなっていたようです。

常に炎が燻っていて、人や獣の遺体、遺骨、ウジや汚物が散乱し、悪臭が絶えない、凄惨な場所であったであろうと推察出来ます。旧約聖書で「地獄」と言うのは、死後の世界ではなく、エルサレムの町外れにあるゴミ捨て場のことであった。これが真実です。

では、新約聖書ではどうなのでしょうか。

ja.wikipedia.org

にある「日本語訳聖書における訳し分け対照表」

f:id:christian-unabridged-dict:20200214134012p:plain

を見てみますと、「地獄」の元となった言葉が、「ゲヘナ」あるいは「ハデス」であることがわかりますが、ゲヘナとは先に説明したとおり、実在の地名であることに変わりなく、ハデスとは、

ja.wikipedia.org

によれば、

ギリシア神話の冥界の神ハーデースからとった言葉であるとされている。旧約聖書のシェオルと共通の概念を持っている。

とあって、ヘレニズム、つまりギリシャ神話に影響されて移植された言葉だということを知ることができます。

「シェオル」については、

en.wikipedia.org

にあるように、アッカド神話における「死者の住まいを取り仕切る精霊」のようなものをヘブライ神話に取り入れた言葉であっただろうと理解するのが妥当でしょう。バビロン捕囚によって持ち帰られた概念だろうということです。

このように、旧約聖書を見る限りイスラエルには「地獄」という概念は、少なくとも死後の世界という意味では存在しなかったのであって、バビロン捕囚の名残であるアッカド神話の神の名前を利用して、また、新約聖書では、ギリシャ文化に親しんで育った人のための比喩としてギリシャ神話の神の名前を利用して、「劣悪な状態」を表現しているに過ぎない、ということになります。

ゲヘナ(ベンヒンノムの谷のゴミ捨て場)のような、あのおぞましい情景、あの吐き気をもよおす悪臭、人が、あのような心をもつとき、それがまさに地獄なんだよ、と聖書は教えているのだと思います。

死後に与えられる罰だと教えてしまっては、聖書が持つ価値のほとんどを捨ててしまっていることになるでしょう。あまつさえ逆手にとって信者から献金をむしり取る道具にするなどはもっての他、言語道断というべきです。