キリスト教の問題点について考える

キリスト教の問題点について考える

伝統的教派プロテスタント信徒が運営するキリスト教批判ブログです

アポロンとダフネ

この記事も過去ブログで書いた記事ですが、ログを取っておいて下さいましたので流用させていただきます。一部間違いがありましたので修正しています。

 

キリスト教徒が、旧約聖書で禁じられている「神の像」を展示するのはなぜかといいますと、神であるイエスキリストが目に見える状態で人類に現れたからだということになるらしいです。なるほど。それはそれで納得するとしましょう。確かに一理あります。しかし、まさか異教の神の像を造形して展示するようなことはありますまい。そのはずです。が、本当にそうでしょうか、見てみましょう。

イタリアのルネサンス期を代表する画家、ボッティチェリは、「聖母子と8人の天使たち」という絵画を描きましたが、その同じ手で「ヴィーナスの誕生」という作品を残しています。ヴィーナスとは異教の女神です。 

 

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Before Bowie, there was Botticelli

 

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Some Masterpieces from the Public Domain: Botticelli   Daystar

 

ボッティチェリより少し後の人、コレッジョは、「幼児キリストを礼拝する聖母」という作品を残しましたが、やはり同じその手で「ヴィーナスとマーキュリーとキューピッド」という作品を残しています。「愛の手ほどき」というサブタイトルがあるこの絵画に登場する三人はいずれも異教の神です。

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Correggio. The Adoration of the Child - Olga's Gallery

 

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Venus with Mercury and Cupid ('The School of Love') | Art UK

 

ミケランジェロも、「サン・ピエトロのピエタ」を造った同じその手で「バッカス」を刻んでいるのです。

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St Peter's - Chapel of the Pieta

 

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ミケランジェロ・ブオナローティ - Wikipedia

 

ベルニーニは「アポロンとダフネ」を作りました。

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ダプネー - Wikipedia

 

モーツァルトだって同罪です。オペラ「魔笛」はエジプトのお話であって、神官や怪物が登場します。

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The Magic Flute | The Worlds of J. Matthew Root

 

そして甚だしきはこの「エステ荘の噴水」を成す異教の神々の像です。エステ荘「Villa d'Este」の庭園に作られた噴水がエフェソスの神話の女神アルテミス(多産の女神)の像になっています。エステ荘はカトリック教会の高位聖職者である枢機卿の邸宅として建設されました。

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  Tivoli Archivi - ROMAN-GATEWAY

 

聖書において、異教の神を造形することは明確に禁じられています。読んで見ましょう。

出エジプト記32:19-20 (日本聖書協会新共同訳聖書より)

宿営に近づくと、彼は若い雄牛の像と踊りとを見た。モーセは激しく怒って、手に持っていた板を投げつけ、山のふもとで砕いた。そして、彼らが造った若い雄牛の像を取って火で焼き」、それを粉々に砕いて水の上にまき散らし、イスラエルの人々に飲ませた。

 モーセイスラエルの人々が異教の偶像神を礼拝しているのをみて激怒したのだと伝えています。異教の偶像神を礼拝することはもちろん、律法では、イスラエルの神であっても造形で表現してはならないと明確に禁じています。

それなのに、なぜ堂々と芸術作品として作成され、500年間も大切に保存されてきたのでしょうか、それは一言で言って、本場ヨーロッパのキリスト教徒はさほど真面目にキリスト教を信仰しているわけではないからです。心からキリスト教の神を信じているのであれば、その信仰対象である神が禁じたことを行うことができるものでしょうか、自分のこの手で悪そのものである異教の神を造形するのかと思うと手に持った筆やノミが震えて仕事にならないことでしょう。また、そのようなものを大切に伝えて行くことはそれ自体神に反する行為であると思わねばならないはずですが、実際には、ベルニーニのアポロンとダフネの造形は、彫刻史上最高とまで評価されています。

ヨーロッパのキリスト教徒は、「神」なんて方便にすぎないのだと考えているのです。実際に神が存し、現実世界に君臨しているのだと理解しているのであれば、「アポロン」や「ヴィーナス」を造形することはできないはずです。また枢機卿が自邸の庭に「多産の女神」の像を置くことはあり得ないはずでしょう。

日本のキリスト教徒のみなさん、あなた方の「信仰」しているものは現実的にはそんなもんです。